忍者ブログ
梔子ゆきがヴァンパイア・クロニクルズの話をするために作ったブログ。偏見の混じった感想など。
| Admin | Write | Comment |
プロフィール
HN:
梔子ゆき
性別:
非公開
自己紹介:
腐女子歴がそろそろ人生の半分を越えた。
P R
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

INTERVIEW WITH THE VAMPIREという表題の通り、人間のインタビュアー「若者(続刊にてダニエルという名前が明らかになりますが、この話では無名)」が、200歳を越えるヴァンパイア・ルイからその人生の物語を聞き出していくというこの物語。
ストーリーは1791年ルイジアナで、人間だった頃のルイがプランテーション農園の農園主をしていたところから始まります。

フランス系移民で、当時25歳だったルイは、黒人奴隷を使って広大な農園を経営していました。有り余る富と美貌の持ち主でしたが、些細な(?)諍いがもとで弟を死なせてしまったことをきっかけに家族の中で孤立するようになり、自身も自責の念に苛まれ、生きる気力を失ってしまいます。
自暴自棄な生活を送りながらひたすらに死を願っていた、そんなある日、彼はヴァンパイア・レスタトに見初められ、ヴァンパイアとなって彼と共に生きることを運命付けられるのです。

そう。レスタトとルイの70年にも及ぶ結婚生活、繰り広げられる痴話喧嘩、愚痴、浮気、離婚と再婚、そして惚気。その全てはここから始まるのです……!!

いっとくけどこの小説、それ以上の何物でもないから(断言)。いや、もしかしたらこの本を真面目に読んで、崇高な教訓を得ている読者もたくさんいるのかもしれませんが、少なくとも、私がこのブログでシリアスな感想ばっかり書くなんてことは期待しないでいただきたい。
アン・ライス女史には非常に申し訳ないのですが、私は哲学や宗教観なんてものにあまり興味がなくて、ただメンヘラホモカップルのラブストーリーを楽しみたいだけの人なので、この先を読む人はその前提をよく理解しておくように。よろしいか?
よろしいならば先へ進もう。

この本では、人間をヴァンパイアにするためには、まずヴァンパイアが人間の血を致死量寸前まで吸い、体内で自分の血と混ぜた血液を人間に飲ませる、ということをしないといけないのですが。
この、最初にレスタトがルイの血を吸うシーンの描写が、どう読んでも『二人の初セックスを濁して濁して表現した』としか思えない件について、まず触れておきたいと思います。

「さあ、私のいうことをよく聞くんだ、ルイ」
こう言うと、彼は階段の上の僕のそばに横になった。彼のしぐさがあまりにも優雅で理性的だったので、まるで恋人のような気がしてしまった。僕ははじかれるように身を引いた。だが、彼は右腕を僕にまわしてぴったりと胸に引き寄せた。そんなに近くに寄り添ったのは初めてだった。すると薄明りの中で、彼の目の素晴らしいきらめきと皮膚の異常な仮面がはっきりと見えた。僕が身動きしようとすると、彼が右手の指を僕の唇に当てて言った。
「じっとしてるんだ」
(中略)
 僕はもがきたかったが彼は指にぐっと力をいれ、僕のうつぶせの体を押さえこんだ。儚い抵抗をやめるや否や、彼は僕の首に深く歯を立てた。(p.33)

語りは淡々としているけど、この回想の中のルイ、明らかにうっとりしちゃってますよね? 完全に魅了されている。
イケメンの強姦魔に襲われて、うっとりしちゃってる間に押し倒されて、抵抗したけど抑え込まれた過程を淡々と語られた挙句、「わかるだろう?」と同意を求められるダニエルの気持ち、少しは考えてあげてください。

「いいえ……つまり、わかるんですが、ぼくが言いたいのは、あのう……」(p.36)

戸惑ってるだろうが!可哀想に。

しかし、そんなラブラブレイプで始まった二人のストーリーですが、間もなく…どころかこの直後から、ルイにかかっていた恋の魔法はどんどん効力を失っていくことになります。
ルイが、ヴァンパイアへと作り替えられていく自分の体の変化に戸惑い、「死んでしまう!」と言って騒ぐシーン。

「誰にでもあることさ」
彼はそう言い張り、僕を助けようともしなかった。思い出すたびに今でも彼を軽蔑するよ。こわがっていたからじゃない、もっと敬虔な態度でこういった変化に僕の注意を向けさせてくれてもよかったのに、と思うからだ。夜を眺め感じたのと同じようなうっとりした気持ちで自分の死を見守ることができるように、僕の気を鎮め、言い聞かせてくれてもよかったのだ。(p.38)

一生に一度の結婚式だったのに、何もかも初めてで不安でいっぱいだったのに夫が気を使ってくれなかった!と怒る嫁。ついさっき、血を吸われる瞬間まで大人しくうっとりレスタトに抱っこされていましたが、ここにきて一気にドリームから醒めた感じです。この時の失望と恨み、200年経っても忘れてませんから!!
ちなみにこの点に関しては、レスタト視点で語られる続刊にて、「そんなことねぇし! 俺あの時めっちゃ気ぃ使ったし、嫁が後悔しないようにちゃんとゆっくりコミュニケーションしたよ!(概意)」と弁解している箇所があります。真実はどっちだったんでしょう。深くわかり合うに至らなかったことは確かですね。
何はともあれ、ルイを仲間にしたレスタトは、年老いた人間の父親と共にルイの家に居候することになりました。
どうでもいいけど、ここでレスタトがルイの家に転がり込むに至るまでには、どういうやり取りがあったんでしょうね?
続刊レスタトの過去編で明かされるところによると、レスタトの父親は貧乏ですがレスタトには自分の財産があり、この時点でも経済的には困っていなかったことがわかります。それなのに親子ともども身一つで嫁の家に転がり込んだために、嫁は彼らのことを貧しい農民だったに違いない、レスタトは結局財産目当てで近づいてきたヒモなんだと誤解することになるわけです。レスタトの資産があれば、自分の屋敷を持つことは簡単だったはずなのに。
レスタトは自伝(として出版される続刊)で「ニューオーリンズにやってきてすぐ、私はルイという名の若きブルジョワジーと運命的な恋に落ちた」とはっきり書いてるので、多分お金なんかは関係なく、恋人と一緒に暮らしたかっただけなんだと思うんですけど、そういうことをちゃんと話さなかったんですねえ。
その上、自分の父親まで面倒見させるなんて…誤解されて当然だよ…。

いよいよ朝が近くなった頃、レスタトはルイに言います。

「お前の分の棺はまだ用意できてないんだ。今朝は私と一緒に寝なくちゃならないぞ」

ルイは嫌がって「僕は物置で寝たい」と訴えますが、レスタトはそんなことはあり得ない、自分が何者かわかっているのか(ヴァンパイアは必ず棺で寝るものだ)、などと言い募って譲りません。後々ストーリーが進むにつれ、ヴァンパイアといえども日光に当たりさえしなければ物置だろうがどこだろうが眠るのに何の問題もないことが発覚しますが、この時点ではそんなことは知る由もないルイと読者たる我々。

レスタト、ルイと一緒に寝たくて必死。

そんなレスタトに押し切られ、結局、この日はレスタトの棺に二人で体を重ねて眠ることになりました。
この時のことを振り返り、ルイは言います。

「いかに彼が美しく魅惑的だとはいえ、こんなにぴったり体を合わせている嫌悪感に戸惑ってしまった」と。

嫌悪感を感じた、と言ってますが、腐女子としてはやはりレスタトを「美しく魅惑的だ」と評価している点に注目したいところ。後々自分でも言ってるけど、ルイはやっぱり、口ではどんなにボロクソ言ってても、レスタトの外見を含めた総合的魅力には全然抗えてないんだよね。
「こんな奴全然タイプじゃなかったのに、なんで結婚しちゃったんだろう…(なんでこんな奴が好きなんだろ…)」って奴だよね。

そんなこんなで同衾した翌晩目覚めると、ルイは完全にヴァンパイアへの変身を終えていました。ヴァンパイアになると、人間だった頃とはケタ違いの身体能力、知覚機能が備わるのです!
とはいえ、自身の力を試す前にまずは棺を仕入れなくてはいけません。
ルイの新しい棺を手に入れるため、二人はさっそく死体置場へ出かけていきます。

「最初に明らかになったことは、レスタトと僕とで棺を霊柩車に積み込み、もう1つの棺を死体置場から盗み出している時でさえ、レスタトなんかちっとも好きじゃないということだった。僕はまだレスタトからは遠い存在だった。ただ、肉体が死ぬ以前よりは遥かに彼に近い存在だったが、(中略)それにしても死ぬ前の僕にとって、レスタトはそれまで経験したこともないほどのまったく圧倒的な『体験』だった。煙草の灰が落ちそうだよ」
「あっ」
若者は慌てて灰皿で煙草をもみ消した。
「つまり、二人の距離が近づいた時、そのう……彼が魔力を失った、ということですか?」
彼は視線をすばやくヴァンパイアに移すとたずねた。両手は前よりたしかな手つきで煙草とマッチを取り出していた。
「そう、まさにその通りだ」
ヴァンパイアはいかにもうれしそうに言った。(p.43-44)

…レスタト(;_;)

「あんな奴、大っ嫌い!」って言われちゃってますね(笑)
この、レスタトとルイが二人揃ってコソコソ棺を盗み出しているシーンって、想像すると結構マヌケでしてね。ルイが幻滅したのもちょっとわかるかなーという気がいたします。

だってね。

ある日、人間離れした美貌のヴァンパイアが突然目の前に現れる。すっかり魅了されて「一緒に行こう」と誘われるままに付いて行ったは良いものの…。

「あ、お前の寝床はまだ用意できてないよ。これから死体置場から盗んでこなきゃならないんだ。おっ、これなんか良さそうじゃないか? これにしよう。ちょっとそっち持って。せーので持ち上げて、合図したら速やかに運び出すぞ。足音を立てるなよ。せーのっ、と……あっヤバい隠れろ、人が来た!」

…とかいうことになったら、いくらイケメンでもちょっとどうよ!?
ダサいしカッコ悪いし、そりゃ棺を盗んでるのは嫁の為だけど、詐欺られた感は否めないと思うんだ。
レスタト、めいっぱい格好つけて口説いて誘惑してプロポーズするのはいいけど、それならちゃんと最後まで格好つけなきゃダメだよ!

プロポーズの言葉は、

「ああ、私の美しいルイ。君のその瞳が、その声が、骸となって喪われるなんて堪えられない。私と一緒に行こう。」

なんて美辞麗句を並べるのでなく、

「俺と一緒に棺桶を盗んでくれないか」

くらいにしとくべきだったんだよ。そしたらきっと幻滅されずに済んだんだよ。
※本文にはプロポーズの言葉は書いてないけど、この本はルイ視点で書かれており、レスタトの口から「嘘ばっかりの内容だ」と言われてるので、現実にはもっと色々なやり取りがあったはず!というのが梔子的鉄板。

ところで、「レスタトはそれまで経験したこともないほどのまったく圧倒的な『体験』だった」って、まるで「あいつセックスだけは完璧だったのに」みたいな風に聞こえちゃうからやめろ。

と、まあとにかくそのような感じで、ルイはヴァンパイア人生の第一歩を踏み出しました。
そしてその後、レスタトに連れられて初めての『食事』へ出かけますが、まだ人間だった頃の感覚が抜けないルイは人間を殺すことができず、レスタトを苛立たせます。
レスタト自身は殺人に抵抗を感じたことはなく、ヴァンパイアになった瞬間から食事を普通に楽しめていたので、レスタトにはルイの気持ちが理解できません。
『混乱して戸惑う自分を優しく宥めてくれなかった!』
『僕は何もわからなかったのに、ちゃんとリードして丁寧に教えてくれなかった!』
と、ここでもまた夫に対する恨みを募らせるルイ。
ルイは常に、『レスタトは、やって当然のことをしなかった最低な奴』という論調でレスタトを責めるのですが、こうして読んでいくと実は『レスタトはもっと優しくしてくれるべきだった』『もっと僕に気を使って、細やかに世話を焼いてくれるべきだった』という主張がメインであることがわかります。
美人で賢くて優しくて可愛いけど、おそろしく手がかかる嫁ルイ。

この時、レスタトはちゃんとルイを獲物のところへ連れていき、「ほら、やってしまえ」と促してやり、ルイがしくじると「まったくお前にはうんざりだよ」と言いながらももう1人別の獲物を捕らえてやり……と、客観的に見ると、そんなに言うほど至らなかったとは思えないんですが、ルイは、

「殺しというのは平凡な行為じゃない。ただ血を飲んで満腹になればいいというものではない」
「他者の生命を体験することだ。しかもしばしば、その他者の生命が血を通してゆっくりと失われる体験でもあるのだ。殺しとは、自分の生命が何度も何度も失われるという体験でもある」
「最初の殺しをするのに、ある程度静かで威厳のある場所を選んでくれてもいいものを、それさえもしてくれなかった」
「(レスタトは)この体験をいろいろなやり方で豊かなものにしてくれても良かったんだ。だが、彼はそうはしてくれなかった」(p.49)

と言って譲らない。
ルイの言ってることは、人間の生活に置き換えるとたぶん、
「食事はね、ただ食って満腹になるだけの行為じゃないんだよ。僕たちの為に殺された牛や豚、鶏の命を、自分の命に取り込んでいく儀式なんだ。
最初の食事を肉から始めるなんてハードルが高すぎるよ。まずは野菜から始めて、他者の生命を奪って生きるということの意味を、段階を踏んで教えてくれるべきだろう。
それなのに彼は僕を喧しい場末のレストランに連れて行って、いきなり牛肉のステーキを並べたかと思うと、無理矢理ナイフとフォークを握らせて『さあ食えよ』って言ったんだ!(号泣)」
みたいな感じだと思うんです。
いや、わかるよ? 言ってることは。確かに、生命を粗末にしちゃいけないし、肉にしても植物にしても犠牲の上に食事が成り立ってるってことは、それぞれがちゃんと意識して日々感謝を捧げて生きなきゃいけないと思うよ?でもさ…

いやお前、25歳にもなった男にそこまで必要だとは思わないだろ。

いくら「嫁ラブ! 繊細で傷つきやすい大事な大事な美人さん、俺が守ってあげるからねマイ・ハニー」を地でいってるレスタトでも、そこまでは考えが及ばなくても仕方ないだろ。

確かに、ルイはヴァンパイアとしてはまだ赤ちゃんも同然だったわけだけど…、そういう教育が本当に必要だったのはルイではなくて、クロウディアだったんじゃないだろうか。でもルイだって、クロウディアにそんなことは教えてやらなかったに違いないんだよ。
と考えると、どうもこの点に関して、ルイにレスタトを責める資格はあまりないように梔子には思えるのですが。

ま、とにかくルイにとってはそんなとこも不満で、新婚早々から二人の溝は少しずつ深まっていきましたとさ。

拍手[8回]

PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[14] [12] [11] [10] [9] [8] [4] [3] [2] [1]

Copyright c 偽牙工房 ~Fake Fang Factory~。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By 深黒 / Template by カキゴオリ☆
忍者ブログ [PR]