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梔子ゆきがヴァンパイア・クロニクルズの話をするために作ったブログ。偏見の混じった感想など。
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プロフィール
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梔子ゆき
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非公開
自己紹介:
腐女子歴がそろそろ人生の半分を越えた。
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何とか無事にフルニエール家を脱したレスタトとルイは、その夜のうちにニューオーリンズへと辿り着き、ホテルに部屋をとりました。
当時、1795年頃のニューオーリンズはまさに人種の坩堝。植民支配側のヨーロッパ系移民と黒人奴隷、ひっきりなしに出入りする貿易船の船乗り、そしてインディアン。ありとあらゆる人種と階級の人間が入り混じりながら、急速に発展する過程にありました。
混沌として華やかに栄えるこの街で、2人は雑多な群衆の中に紛れるように暮らし始めます。しかし当然のことながら、2人の間の溝は依然根深く埋まらないまま。というより、フルニエールの酒蔵で全てをぶつけ合ってしまった彼らは最早、破局の危機にありました。

もしかしたら、何かほんの些細なきっかけさえあったなら、2人はそのまま別れていたのかもしれません。
しかし、そうはなりませんでした。
そう。レスルイを語る上で決して避けては通れない、クロウディアとの出会い。彼女の登場は、2人の行く末を劇的に変えるターニングポイントとなりました。このブログを読んでいる人(いるのか?)の中で、この期に及んで彼女を知らない人はおそらくいないでしょうね。
何ていうのかな……この出来事に関して個人的に語りたいことは山ほどあるんですけど、ありすぎて何から語れば良いのか全然わかりません。なんかもう全然まとまりの無いブログ記事になってしまう予感がぷんぷんするのですが、何はともあれ、まずは原作に描かれた経緯を順に振り返ってみましょう。


ホテルに辿り着いた時、2人はどちらも空腹に耐えかねていましたが、仲違いしていたので、レスタトは1人でさっさと先に狩りへ出かけてしまいました。
ルイは、ヴァンパイアとして生きることに対する苦悩や、レスタトと別れることについての迷いをまだ引き摺っていて、どうにも憂鬱な気分でした。しかし、精神的な苦しみがそうさせるのか、その時ルイの中にはそれまでよりもずっと強い、殺しへの欲望が芽生えていました。ヴァンパイアにとっての『殺し/食事』は、人間の生活の中では例えるものも無いほどの快楽をもたらします。

満たされない心の不穏を、何もかもどうでも良くなる程の強烈な快感で吹き飛ばしたい。

その時ルイの心身を支配していたのは、そんな本能に近い感情だったのかもしれません。
しかし、それはそう簡単なことではありませんでした。ルイはそれまで人間の生き血を拒絶して生きてきましたが、動物などという代替的な食物ではそこまでの快楽を得ることはできないからです。
ルイがその生理的な欲望を満たすためには、人間を殺すより他はありませんでした。

ルイは、自分の中にある殺しへの欲望を自覚しては自らを「悪魔そのものだ」と思い、そんな自分自身を嫌悪する気持ちを見つけては「殺しを嫌悪している自分は本当に悪魔なのだろうか」と考えたりしながら、独り鬱々と夜の街を彷徨い歩きました。
そんな時のことです。

ルイの耳に、小さな女の子の泣き声が聞こえてきたのは。

その声は、一軒の家の中から聞こえていました。薄暗いその家の中で、女の子は、疫病で死んだ母親の死体に取りすがって泣いていました。まだ6歳にも満たないと思われるその女の子は、母親の死を理解することすらできない様子で、ルイの姿を見ると「たすけて。ペストが来る前にお母さんとお船に乗るの。お父さんが待っているの」と、泣いて縋ってきました。

ルイは心底哀れに思ってその子を抱き上げましたが、その瞬間彼の脳裏によみがえったのは、ランタンを投げつけてきたバベットの憎しみに歪んだ顔でした。

人間を愛する心、孤独な子どもを哀れに想う気持ちを捨て去ることはできなくても、彼が人間を喰い物にする化け物であることは変えられない現実です。ルイは、終わらない苦悩を抱えながら人間を殺して生きるこの人生こそ、呪われた地獄なのだと理解しました。

気が付くと、ルイは腕の中の少女の首に深く牙を刺し込んでいました。

4年ぶりの人間の血の味は、ルイに口もきけなくなる程の愉悦をもたらしました。しかし、ふと母親の死体と目があった瞬間、ルイは思わず我に返り子どもを放り出しました。そして、そんな彼の姿を、レスタトが窓の外から覗き見ていたことに気づいてしまうのです。

レスタトは、有頂天になってルイを囃し立てます。

「子どもは生きてるぞ、ルイ。まだ息があったぞ。私が戻ってあの子をヴァンパイアにしちまおうか? ものになるんじゃないか、ルイ。それに、あの子買ってやれる、ありったけのきれいな服のことも考えてみろ。ルイ。待て、ルイ! そう言ってくれれば、私があの子のところに戻ってやるぞ!」
ホテルに戻る間じゅう、彼はそう言いながら僕を追いかけてきた。
(中略)
僕は怒りの頂点に達していた。それで、彼が割れたガラスの間を抜けてはいってきた時、かつてないほど凄まじい格闘が始まった。その格闘を途中でやめたのは、地獄のことを考えたからだ。怨みあい、取っ組み合っている地獄の二つの魂と化した僕たちのことを思い浮かべたからだった。自信も、目的も、彼をつかんでいた手の力もなくしてしまったね。
僕は床に座り込み、彼は前に立ちはだかった。彼の胸は苦しげに揺れていたが、その眼差しは冷たかった。
「お前は馬鹿だ、ルイ」
そう言った彼の声は落ち着いていた。あまりに落ち着いていたので僕は思わず引きこまれそうになってしまった。
「陽が昇り始めてるぞ」
格闘のせいで彼の胸は少し波打っていた。目を細めて窓を眺めている。こんなに静かな彼は初めてだった。格闘が何らかの意味で彼をまいらせたんだ、いや、それとも他の何かが。
「お前の棺に入って寝ろ。だが明日の晩に……話し合おう」
そう言う彼の様子には怒りの気配すら見えなかった。
(p.120-122)


……はい。
ちょっと中途半端ではあるんですが、クロウディア“誕生”編の前半戦ということで、ここで一区切りとさせていただきます。

先のネタ晴らしをしてしまうと(このブログに『ネタバレ』という概念はありません、悪しからず)、クロウディアはこの後レスタトとルイの娘として迎えられ、ルイの愛情を一身に受けることになるわけですが…。
こうして読み返してみると、出会いの時点で、ルイがクロウディア個人に特に思い入れを持った描写って意外と無いんですね。なんかもっと、最初からクロウディアの魅力に惹かれて彼女に欲望を抱いたようなイメージがあったんですけど、忠実に原作を読み解いていくと、ルイの衝動はあくまでも自分のアイデンティティに関する葛藤から生まれたものであって、クロウディアはたまたまそこに居ただけ、という感じ。もちろん、「偶然という名の運命」と言うならそれはそうだと思うのですが、クロウディアはルイが「選んだ」というよりも、ルイがたまたま血を吸ったことによって彼にとって特別な存在になっていったんだろうなと感じました。
まぁ、内省的で鬱々としたアイデンティティの持ち主であるルイの『欲望』が成人の男女ではなく、明らかな弱者――幼女へ向かったことには多少の必然性があるかもしれませんが、私はルイのファンなので、ルイが、自分より弱い幼女にしか欲情できない鬱屈したロリコン野郎だなんて言いません!言いませんよ!!
いやぁ、だって…創作上のロリコンにしたって6歳はアカンだろ、6歳は。

あと、これはこの先の展開で一層顕著になる点ですが。
ルイは、いつもは破天荒で落ち着きのないレスタトがふと冷静になったり、思慮深い様子を見せたりすると、どんな酷い喧嘩の真っ最中でも途端に魅了されてしまうのですね。上記に引用した「あまりに落ち着いていたので思わず引き込まれそうになってしまった」っていう文章とか、そう言ってる時点でもう引き込まれてるよね?みたいな。
原作のごく最初の方にも、「彼の仕草があまりにも紳士的だったので、恋人のような気がしてしまった」というような文章があったりして、似たような言い回しは随所にあると思うんだけど…。
この本の中で、ルイはレスタトのことを「嫌いだった」って頑なに言い張ってるんですけど、実はメロメロラブラブだったの全然隠せてないし、これインタビュー聞いてるダニエルにだってバレバレだっただろうと思うんだけど、そのへんを一切追及しないダニエルってなんて優しいんだろうとか…思いません?(私は思います)
そういうとこを見てると、本当にこの本ってルイが

「バカ!バカ!僕をヴァンパイアにして永遠の命を与えたのは君なのに、僕を独り遺して死んじゃうなんて最低だよ!もう本当に大っ嫌いなんだから!」

って愚痴るに終始する小説なんだなってつくづく思うよね。
もちろん大歓迎ですもっと愚痴って下さい!

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