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梔子ゆきがヴァンパイア・クロニクルズの話をするために作ったブログ。偏見の混じった感想など。
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プロフィール
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梔子ゆき
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非公開
自己紹介:
腐女子歴がそろそろ人生の半分を越えた。
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クロウディアが、レスタトとルイの娘として迎えられてから65年。
『大人』になったクロウディアは、自分たち3人が周囲の人間たちと全く異なる存在であることに疑問を抱き始めました。何故、自分たちは人間とは違い、年を取らないのか? 何故、自分は大人になれないのか?
それは、どんな方便を以ってしても避けることのできない、彼女が当然抱くべきアイデンティティへの葛藤でした。
当然の成り行きとして、クロウディアはその答えを『親』であるレスタトとルイに求めます。
しかし、レスタトもルイも、彼女を納得させられるような答えを持っていませんでした。

「自分のルーツを知りたい」と、ヴァンパイアの起源や、自分がヴァンパイアへと変じた理由を問い続ける彼女に、レスタトは、
「そんなことには何の意味もない」
「ヴァンパイアになったおかげでお前は老いもせず、死にもしないで済んだんだ!」
「ヴァンパイアの命に感謝しろ!」
と一方的に怒鳴り付けるばかり。
しかしルイには、レスタトのようにクロウディアの葛藤を頭ごなしに押さえつけることはできませんでした。
ルイはクロウディアを、彼女と初めて出会った廃屋に連れて行き、彼女がヴァンパイアになった時の経緯を話してやりました。彼女が、ルイの初めての人間の獲物であったこと。レスタトが、彼女を人ならざる者へ生まれ変わらせたことーーー。

真実を知ったクロウディアはショックを受け、2人に対し反感を覚えます。しかし、だからといって彼女には、その仮初めの家庭を飛び出していくことなどできませんでした。
彼女の体は、わずか5歳の少女のまま。人間社会の中で怪しまれずに生活するためには、大人の保護者が必要不可欠だったのです。

ところで、クロウディアに彼女の「誕生」の秘密を明かしてしまったルイは、しかし一方で心の重荷が下りたようでもあり、以前よりも率直に彼女と語り合えるようになりました。
ルイは彼女に問われるまま、自分をヴァンパイアにしたのはレスタトであったこと、自分がかつてクロウディアと同じようにヴァンパイアの起源を知りたいと願ったこと、そして、そんなルイに対してレスタトがやはり何一つまともに答えられなかったこと等を、包み隠さず話してやりました。
この時のルイが、具体的にどんなことを、どんな風に語ったかはざっくりとしか描かれていないので、詳しくはわかりません。
しかしルイが自分と同じようにヴァンパイアに「された側」だと知ったクロウディアは、やがてルイを許し、憎しみをレスタトに集中させるようになります。

そして、ついに彼女はルイに言いました。

「あなたのことは愛してるわ。でも、彼を許すことはできない。彼と別れなくちゃ」

別れるとはいっても、ルイは、レスタトが簡単には自分達を手放さないだろうということがわかっていました。しかし一方で、クロウディアの憎しみはもはや押し止められるものではないということもわかっていたので、クロウディアの願いを叶えるため、レスタトと別れようと画策し始めます。
財産を持たない彼の為(ルイはレスタトが貧乏だと思い込んでいました)、少しでも円満に離れられるようにと、彼に資産の一部を譲渡し、 ルイがいなくなっても豊かな生活を送れるよう配慮してやったりしました。
しかし、ルイがあくまで平和的に解決しようとしている陰で、クロウディアは冷酷な決意を立てていたのです。
すなわち、彼を亡きものにすることを――。


さて。
今回はこの辺りの展開から、クロウディアがレスタトを質問攻めにするシーンをクローズアップします。
私は当初、特にこの部分に注目していたわけではなかったのですが、先日ブログ読者さんから「この部分のレスタトの心情が気になります」とコメントを頂き、改めて読んでみたところ大変面白い表現があることに気づいたので、私なりの解釈とともにご紹介させて下さい。
今まで気づかなかったけど、このシーンめっちゃレスタト×ルイですよ!!

(クロウディアが)ヴァンパイアの書物を読んでは、レスタトを質問責めにする時の冷静さには僕も舌を巻いたほどだ。彼の痛烈さにもたじろがず、折りに触れご丁寧に同じ質問を、いろいろな訊き方でくりかえし訊く。あのレスタトが見落としている点はないものかと、じつに注意深く考えをめぐらせるんだ。
「どんなヴァンパイアが今のあなたにしたの?」
と彼女は訊くんだ。書物から顔も上げず、彼の猛攻にさらされても睫毛を伏せたままでね。
「どうしてその人のことを話してくれないの?」
彼女は続ける。彼の猛烈な反対などどこ吹く風というようにね。彼の苛立ちには免疫になっていたんだな。
「貪欲な奴らだ、揃いも揃って!」
次の夜、暗い部屋のまんなかを大股で行ったり来たりしながら彼は言った。クロウディアを怨みがましい目で睨むんだが、彼女のほうは、お気に入りの隅っこにおさまり、自分用のローソクのあかりの輪の中でまわりにうず高く愛読書を積み重ねていた。
「不老不死の生命だけじゃまだ不足というんだな! そうなんだ。おまえたちはありがたい贈り物にけちをつけようって気なんだ。私はそいつを、街を歩いている誰にでもくれてやるぞ。喜んで飛びついてくるだろうよ……」
「あなたは喜んで飛びついたってわけ?」
彼女はほとんど口も動かさずにそっとたずねる。
「……でもお前は、お前ならそのわけを知ってるだろう。お前はそれを終わらせたいのか? 死を与えるのは、生を与えるよりずっと簡単なんだぞ!」
彼はくるりと僕の方をふり向いた。彼女のローソクの微かな明かりが彼の影を僕の方に投げかけた。その明かりで彼の金髪は後光のような光の輪に見えたが、頬骨を照らしただけで、顔は影になったままだった。
「お前、死を望んでるのか?」
「自覚することは死とは違うわ」
「質問に答えろ! 死を望んでるのか!」
「あなたがこういったすべてのことを与えてくれるわけね。みんなあなたがもたらしたことなのね、生も死も」
彼女は嘲るように呟いた。
「そうだ。私がそうするんだ」
「あなたって何もわかってないのね」
彼女は重々しく言った。その声は通りの微かな物音にもかき消されるほど低かった。(中略)
「あなたを作り上げた恩人のヴァンパイアさんも何もわかってない方だったようね。そのヴァンパイアさんを作ったヴァンパイアさんも何もわかっていなかった。そのまた前のヴァンパイアさんも何もわかってない、その前も、そのまた前も同じ。何もないところから何かが出てくることはないんですものね。いくらさかのぼっても何も出てこないわ! そこで私たちとしても、何の知識もないという知識をたのみに生きてゆかなくてはならないんだわ」
「そうとも!」
だしぬけに彼が叫んだ。両手を突き出している。声には単なる怒りを通り越したひびきがあった。
彼は沈黙した。彼はゆっくりと体をまわした。まるで僕が彼の警戒を招くような素振りをしたかのようだった。別に彼の背後に迫っているわけでもないのにね。彼のその仕草は、僕が人間たちを襲うとき、彼らが僕の息を感じて振り返りながら、まわりにはまったく誰もいなかったはずだということに気づくときの仕草を思い出させた……僕の顔や喘ぎに気づく前の恐ろしい疑惑の一瞬さ。彼は今、僕をじっと見ている。唇が震えているのが、はっきりわかった。怖がっているんだ。レスタトが怖がるとはね。(p.193-196)

クロウディアに「余計なことは考えるな。不老不死の命に感謝しろ」と言い聞かせていたと思ったら、突然ルイに向かって「お前は死を望んでいるのか」と問いかけるレスタト。
確かに、ちょっと話の意図がわかりにくい部分ですね。
私は原作者ではないので本当の答えはわからないんですが……。でも、一つの可能性として、このシーンのレスタトは最初から、クロウディアだけでなく、ルイにも話しかけているのだと考えるとどうでしょうか。
上の引用部分ではルイが一言も喋らないのでわかりにくいのですが、レスタトは「揃いも揃って貪欲な奴らだ」「お前たちは有り難い贈り物にけちをつけている」と言っているので、そこには明らかにルイも含まれています。つまりこの喧嘩は、

レスタト VS クロウディア+ルイ

という構図で始まっているのですね(少なくともレスタトはそう見なしている)。

「あなたは喜んで飛びついたってわけ?」

このクロウディアの台詞は、「不老不死などという苦しみに安易に飛びつくものなどいるわけがない」という示唆でしょう。現に彼女はそのために苦しんでいるわけですから当然です。
それを受けたレスタトは一瞬黙り込みますが、言います。

「……でもお前は、お前ならそのわけを知ってるだろう。お前はそれを終わらせたいのか? 死を与えるのは、生を与えるよりずっと簡単なんだぞ!」

ここで、レスタトの台詞の対象は「お前たち」から「お前」という単数形に変わりました。まあ英語ではどちらも"You"と書かれていると思いますが、この台詞は明らかにルイ1人へ向けられたものです。
何故かというと、この3人の中で、ヴァンパイアになるかどうかを自分で選ぶことができたのはルイだけだからです。「自分の意思で不老不死を選ぶ人間の気持ちが、お前ならわかるはずだろう」という台詞の客体として成立するのはルイしかいません。
それを踏まえて、次に続く「お前は死を望んでいるのか?」の意味を考えてみると……

『お前は、後悔しているのか?』

とでも言い換えることができそうです。
ルイがヴァンパイアになることを選んだ理由――…はっきりとは語られてはいませんが、それは多分、レスタトと恋に落ちたが故でした。
レスタトはルイに、「たとえ不老不死に苦しみが伴うとしても、愛の為にそれを選び取る人間の気持ちがお前にはわかるはずだろう。それとも、まさか今はそれを後悔して死を望んでいるとでも言うのか?」と問いかけているのではないでしょうか。
しかし、彼のその問いかけに対しルイは口を開きませんでした。ここでクロウディアが「自覚することは死とは違う」と口を挟むのは、答えられないルイを庇っているようにも見えます。レスタトが「質問に答えろ!」と逆上しているのは、クロウディアではなくルイに対して、なのです。
ルイの台詞や心情描写が一言もなく、淡々と地の文を語っているだけなので、まるでルイは傍観者であったように見えてしまうのですが……実はクロウディアは間に挟まっているだけで、このシーンのメインはルイとレスタトなのだと思います。

そう捉えると、このシーンの最後でレスタトが怯えた目でルイを見つめていたというのも納得できるでしょう。
レスタトは、ルイを深く愛していました。そのルイが、後悔しているのかもしれない。かつて離れてしまいそうになった時、クロウディアを犠牲にしてまで繋ぎとめた愛しい恋人。でも、その効力ももはや切れかけている。
彼が何か一言でも口を開けば、それだけでレスタトは絶望の底へ落とされてしまう。彼はきっと、それを怖れていた。

クロウディアを鎹にして、60年以上を共に過ごしていた2人のバランスが少しずつ崩れ始めて、取り返しがつかないところにまでいってしまおうとしている。
そんな情景を描写した1シーンなのかな、と私は思いました。


なんか、うまく簡潔にまとめられなくて長くなってしまいましたが……これで私の萌が伝わるだろうか;
ここだけに限らずなんですけど、原作を読んでると「レスタト、すごいルイのこと好きだったんだな!」ってビックリするよね。いや、すごい好きなのは知ってたけど、そんなに!?みたいな(笑)
私も一応、同人屋の端くれではあるんですけど、なんかもう仕事ないよね。公式が最大手。

レスタト惨殺未遂事件のとこまでいけなかったけど、長くなり過ぎたので今回はこのへんで。
また次回!

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